過食嘔吐の克服事例 (対人関係療法、イメージ療法)
女性 31歳
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過食嘔吐のクライアントとしては、少し重症の部類に入る人が、カウンセリングを始めて3カ月で過食嘔吐がゼロになるという劇的な変化があった事例です。
正直、私は当初、
”これは普通よりも時間がかかるな・・・・”
と思っていたクライアントです。
なぜ、時間がかかると思ったかというと、まず、
”過食嘔吐が毎日で、1日2回~3回”
という頻度の多さです。 そして、更に、
”昼間からのアルコールを欠かさない”
といったアルコール依存傾向があるということ。
これだけでも、困難なクライアントの部類に入ります。
アルコールがある場合は、まずアルコールから止めていくことが重要になってきます。簡単なプロフィールです。
身長は165㎝で、体重は40㎏
年齢は31歳で、過食嘔吐歴は、15年。
万引き癖があり、2回捕まっている。
既婚で子どもが2人、7歳男、6歳男
といったような状況でした。そして、子どもの頃、小学3年生ぐらいの頃にイジメにあっていたという経験と、3歳の時に、父親を交通事故で亡くしていて母子家庭であったということ。
これらの環境が、大きく摂食障害に影響を与えていました。
このような人が、3カ月12回のカウンセリングで、過食嘔吐が、ピタリ止まり、ゼロになりました。私として、当初これは結構時間がかかるなと思っていたので、本当にビックリです。
これだけ、短期間で過食嘔吐が止まったのは、
”本人の強い意思”
”ご家族の協力”
が大きかったのではないかと思います。
それでは、
そのプロセスを紹介していきたいと思います。過食嘔吐のカウンセリングでまずやっていくのが、
生まれてから今までの経緯を伺って、”問題の焦点を絞っていく”
ということです。
カウンセリングは、基本的に対人関係療法の枠組みの中で行なっていきます。そこで、大きく浮かび上がってきたのが、
”言えない”
ということでした。
それは、ご主人との関係の上でということでした。
”ご主人の前で本来の自分でいられない”
というものです。
ご主人がいると、
自由がない!!
いつも顔色をうかがってしまう!!
ということです。
夫がいると、自分のリズムがくるってしまってイライラしてしまう!!
夫がいると家事が思いように進まない!!
一人で家事をしたいのに!!”でも、言えない!!”
ということで、とても息苦しくなって、いつもイライラしていました。
さて、これはどうすればいいのでしょうか???
対人関係療法だけで進めていく場合には、ここで具体的なコミュニケーションを検討して、ご主人に気持ちを話してみましょう!!
といった形で進めていきます。でも、
感情的に行き詰ってしまっているとそれは簡単に行かない場合が多いものです。
そのような場合には、この、
”言えない”
原因を見ていきます。
どのようにしていくかと言うと、言えない気持ちを掘り下げていって、過去との繋がりを見ていくということをやっていきます。
言えない気持ちを見ていくと、小学校5年生の自分に行きつきました。
イジメられていて、孤独になっている自分です。学校でも孤独、家に帰ってからも、母子家庭なのでお母さんはいないし、忙しいお母さんが帰ってきたら、余計なマイナスのことなんか絶対に
言えない。
”楽しいいい子でいなくっちゃ”
と言う思いで、誰にも言えなくなってしまいます。
小学校5年生の自分は、
”すごくいつも気を使っていて、我慢していて、孤独で寂しい自分”
でした。
これが、インナーチャイルドです。
言えない源になっているインナーチャイルドです。
まずは、そんな5年生の自分に寄り添って話を聞いて上げます。
”よく頑張ったね”
”辛かったよね”
”そんなに自分をつくらなくてもいいんだよ”
”たまには甘えてもいいんだよ”
といったように声をかけてあげました。
”偉いね”
”あなたの思いはわかっているよ”
”大好きだよ”
と言って、小学校5年生の自分を抱きしめてあげます。
ここが、とても大切なところです。
自分の中の言えない原因となっていて気持ちを抱えている小学校5年生の自分を認めて上げて、抱きしめてあげるのです。そして、
”自分の気持ちを話しても大丈夫だよ”
といってあげます。
ここが、とても効果の上がるところです。
実際、これをやった翌週には、ご主人に自分の気持ちを全て話すことができました。
それ以来、ご主人とのコミュニケーションには大きな変化をみせたのです。
まずは、ここでいちばん大きな変化が訪れました。イライラやいつも我慢している息苦しさが消えていったのです。
そして、その後にやっていったのは、
3歳で亡くなったお父さんとの関係
お母さんとの関係
妹さんとの関係
ここもしっかりと取り組んでいきました。
まずは、インナーチャイルドが癒されて、
“言えない”が”言える”になって、ご主人との関係が良好になってきて、
過食が大分おさまるようになってきました。
そして、次に浮上してきたのが、
”寂しい”
という気持ちでした。
”一人になると、どうしても過食をしてしまう!!”
その深層意識を見ていくと、
”一人ぼっちで寂しい”
という気持ちにつきあたりました。
過食で、その寂しさを紛らしていたのです。
やはり、そこでも、寂しさの源を見ていきます。
そうすると、お父さんとの関係での寂しさや、お母さんがいつもそばにいてくれない寂しさが浮かびあがってきました。
”寂しさを抱えた子どもの自分”
インナーチャイルドです。
自分が一人になると、
” 寂しくて過食して紛らしている”
といった気持ちに気づきました。
そんな子どもの自分を癒してあげて抱きしめていくことによって、そんな寂しさで過食するということもどんどんなくなっていきました。
そこまでいくとあと残っているのは、
”太ってしまったらどうしよう”
という太ることへの恐怖心です。
太ることへの恐怖心をなくしていくためには、まず、
”太る恐怖の本当の理由”
を突き止めます。 奥底ににある本当の理由です。
それを掘り下げて出てきたのは、
”太ったら自信がなくなる”
というものでした。
そして、遡っていくと中学生の頃に行きつきます。
”太っていて自信がなかった自分”
そして、
”ダイエットに成功して自信をつけた自分”
です。
それ以来、
”痩せているのが自分”
というアイデンティティが生まれてしまったのです。
だから、
”太ってしまったら自分がなくなる”
という恐怖心を抱えていました。
これをどうにかしなければいけないのですが、これは、言葉でいくら言い聞かせてもどうにもならないものです。
これを変えていくには、深層意識に働きかけて変えていく必要があります。
いつもそれをやっていく技法が、
”コアトランスフォーメーション”
というNLPの心理療法です。
これが、太る恐さをなくしていくにはとても効果的に働きます。
この技法は、リラックスした状態でイメージとエネルギーをつかっていきます。
この心理療法を施すことによって、体重が増えた自分を受け容れることができるようになっていきました。あれほど拘っていた、
”痩せていなければ私じゃない!!”
という思いもどんどん薄れていきました。
あれよあれよという間に、太ることを許せるようになり、食べられなかったお米も食べられるようになって、あっと言う間に過食嘔吐は止まってしまいました。
自尊心を取り戻し、我慢したり、自分を演じたりすることがなくなって、自分に自信がついて、とても心が満たされて、気持ちが安定してきたことが過食嘔吐を止めてくれたのでした。